浜松城

はままつじょう

浜松城

Photo: Saigen Jiro / Wikimedia Commons / CC0

浜松城

静岡県浜松市にある浜松城は、若き日の徳川家康が17年間にわたって居城とし、遠江国支配の拠点とした城郭である。後世において「出世城」としてブランド化された背景や、武田信玄による壊滅的な敗北の記憶、そして荒々しくも高度な技術に裏打ちされた石垣の建築構造について詳述する。

基本情報

名称
浜松城
別名
曳馬城(前身)、出世城
所在地
静岡県浜松市
築城
1570年(元亀元年)
主な築城者
徳川家康
現在の城跡・建造物の状態
浜松城公園として整備。模擬天守があり、野面積みの石垣が良好な状態で現存。

01

歴代城主が要職を歴任した「出世城」としてのブランド

浜松城は江戸時代を通じて「出世城」と呼ばれ、大名たちの間で特別な扱いを受けていた。家康がこの城を拠点に勢力を拡大し、最終的に天下人へと登り詰めた縁起の良さがその理由であるが、実際の人事記録もそれを裏付けている。江戸幕府において浜松城主を務めた譜代大名25代のうち、老中や大坂城代、京都所司代といった幕府の最高首脳陣に抜擢された者が半数以上を占めている。幕府側が「家康公の神聖な城を治める者には重責を担わせる」という権威付けを行っていた側面があり、大名にとって浜松城主への任命は出世コースの確約を意味していた。

歴代城主が要職を歴任した「出世城」としてのブランド

02

生涯最大の敗戦「三方ヶ原の戦い」としかみ像の記憶

天下人の居城という栄光の歴史の一方で、浜松城は家康にとって最大の挫折の舞台でもある。1572年、甲斐から侵攻してきた武田信玄の圧倒的な大軍に対し、家康は浜松城から打って出る決断を下す。しかし三方ヶ原(現在の浜松市北部)での野戦において徳川軍は武田軍の戦術の前に完全に崩壊し、家康は多くの重臣を失いながら僅かな供回りとともに命からがら浜松城へ逃げ帰った。この敗走の際、極度の恐怖から家康が馬上で脱糞したという逸話や、自らの惨めな姿を絵師に描かせて生涯の戒めとした「しかみ像(徳川家康三方ヶ原戦役画像)」など、英雄の人間臭い敗北の記憶がこの地に刻まれている。

生涯最大の敗戦「三方ヶ原の戦い」としかみ像の記憶

03

荒々しさと合理性を兼ね備えた「野面積み」の石垣

現在の浜松城の天守台を支えているのは、大小さまざまな自然石を加工せずにそのまま積み上げた「野面積み(のづらづみ)」と呼ばれる古風な石垣である。一見すると石と石の間に隙間が多く、崩れやすく粗末な造りに見えるかもしれない。しかし、この隙間が存在することで大雨が降っても内部の土圧とともに水がスムーズに排出され、水圧によって石垣が崩壊するのを防ぐという極めて合理的な排水構造を持っている。実際、この野面積みの石垣は築城から400年以上が経過し、幾度の大地震や風雪を経験しているにもかかわらず、現在に至るまで一度も崩壊することなくその強靭な姿を保ち続けている。

荒々しさと合理性を兼ね備えた「野面積み」の石垣Photo: Saigen Jiro / Wikimedia Commons / CC0

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